高齢化社会における医療体制・大学入試のあり方を考える…韓国で起きていること
出生率がOECD(経済協力開発機構)諸国で最も低い韓国では、高齢化が驚異的な速さで進んでおり、近い将来、深刻な医師不足に陥ることが懸念されている。これを踏まえて韓国政府は2月6日、2025年から医学部の定員を増やすことを決めた。現在の3058人から2000人増やして5058人にするという。
同様に高齢化が進む日本では、医学部の定員が2008年から2017年までの10年間で、7793人から9420人へ増えた。現在も9420人が総定員数の上限となっている。1000人あたりの医師数は、日韓ともに2.6人(2021年)で、OECDの平均値3.7人を大きく下回る。ゆえに、韓国の医学部定員増の決定は、高齢化社会への急速な移行に備えるものとして、歓迎されるべきものであるはずだ。
ところが、この医学部定員増の決定に対し、現場の医師や専攻医(日本の研修医に相当)が反発。医師がストライキなどに参加すれば、その間は患者に対して十分なケアができなくなる恐れがある。これに対して韓国政府は対抗処置をとることを表明。ストライキが決行された場合には、業務復帰命令を出し、従わない場合には医師免許の取り消しなど強硬的な手段を辞さないとしている。
反対する理由として挙げられているのは2つ。まずは現与党が次回選挙での票集めを目論んでいるのではないかという政治への不信。もう1つは「患者を救いたい」という意識よりも、職業としての安定性・収入の高さ・社会的な尊敬を得ることが本音の志望理由である若者が多く、社会に必要な高齢者医療を志望する医師は増えないのではないかという疑念がある。実際、ソウル大学の理工系学部よりも、地方大学の医学部の方が、進学する学生の学力は高いらしく、医学部の定員が増加すれば、理系学生のなかで医学部に進学希望先を変える若者が増えるのはほぼ確実だろう。優秀な理工系の人材が医学部に流れたら、自動車やデジタル・ITなど韓国の重要な産業の基盤が中長期的に揺らぐことも想定される。
同様の問題を抱える日本は、どんな施策をとるべきか。韓国の動向を他人事とせず、当事者意識を持って医療体制・大学入試のあり方を考えねばならないだろう。特に医学部志望者は、こうした絶対的な答えのない問題に関心を持ち、明確な理由とともに自身の考えを表現できるようにしておくと、医学部入試必須の面接に落ち着いて臨めるので、ぜひ実践を!
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